遺言:【遺言を作成する前に】相続の基本原則②

相続財産の範囲(なにを相続するのか)

相続が開始すると、被相続人(亡くなった人)の財産に属していた一切の権利義務は、全て相続人が承継します。

遺言相続における相続財産とは、被相続人が所有していた財産と債務のすべてを指し、預貯金・不動産・証券・車・貴金属など金銭に見積もることのできるものが含まれます。これら一般的な財産以外でも相続財産にあたるものとして、ゴルフ会員権や特許権などがあります。その他、損害賠償請求権も相続財産として相続人が承継します。

相続財産に含まれないものとして、下記イ~ハ等があります。

イ)被相続人の一身に専属したもの(民法896条ただし書)
「一身専属権」とは、個人の人格・才能や地位と密接不可分の関係にあるために、他人による権利行使・義務の履行を認めるのが不適当な権利義務をいいます。

〈一身専属権の具体例〉
・帰属上の一身専属権:個人の信頼関係を基に成立する権利で、扶養請求権や生活保護受給権、公営住宅の使用権、代理権など
・行使上の一身専属権:誰でも有することはできるが、使用するかどうかは個人の意思に委ねられる権利で、離婚請求権、慰謝料請求権など

ロ)祭祀財産(系譜、祭具、墳墓)
系譜、祭具、墳墓など祖先の祭祀のための財産は、相続とは別のルールで承継されます。いわゆる祖先の祭祀を主催すべき者(祭祀主催者)によって承継しますが、祭祀主催者は、①被相続人の指定(遺言でも可)、②指定がない場合には慣習、③慣習が明らかでない場合には家庭裁判所の審判、の順で決まります(民法897条)。
なお、香典や弔慰金は、慣習上喪主あるいは遺族への贈与であって、相続財産とはならないと解されています。

ハ)生命保険金
受取人が「被保険者自身」である場合は相続財産になりますが、受取人が「相続人中の特定の者」である場合には相続財産にはなりません。

相続分(どれだけ相続するか)

相続分とは、共同相続において、各相続人がそれぞれ相続財産の何割を取得することができるのか、という相続財産全体に対する各相続人の持分をいいます。

被相続人は、遺言によって相続分を指定することができます(民法902条)。
この指定がないときは、民法の定める相続分(=法定相続分)の規定が適用されます(民法900条)。

第二節 相続分
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)より引用

共同相続人のうちの一人が、被相続人から生前贈与や遺言による贈与を受けていたり、共同相続人の中に被相続人の財産形成に多大な寄与をしていた場合なんかでは、こうした事情を考慮しながら具体的な相続分が算出され、これらを基礎に遺産分割がなされ、最終的に各相続人の相続財産が確定します。

もし最終的に話し合いがつかない場合には、家庭裁判所が、相続分に応じて相続財産を割り振ることとなります。