遺言:【遺言書には何を書く?その②】法的効力のない「付言事項」とは

付言事項(ふげんじこう)

遺言書を通して、お世話になった方への感謝、家族や自分が大切にしてきたモノへの気持ちや願いなどを伝えることがあります。この、感謝や気持ち、願いを伝える文章を「付言事項」といいます。

付言は、法的な効力は認められないものの、遺言者が自由に残せるものなので、残される人へのメッセージや遺言者の希望など、制約は特にありません。ただし、付言の中に推定相続人の廃除を窺わせるなどの誤解を招く内容や表現を書くことは、相続後において混乱や誤解を招く恐れがあるので注意が必要です。

付言は、遺言書の内容を理解しやすくする役目を果たし、残された家族が、遺言の内容を納得して相続手続きを進めるために重要です。また、相続トラブルの防止にも役に立ちます。

遺言事項に関する民法の条文

第781条(認知の方式)
2 認知は、遺言によっても、することができる。

第839条(未成年後見人の指定)
1 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。

第848条(未成年後見監督人の指定)
 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。

第893条(遺言による推定相続人の廃除)
 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

第894条(推定相続人の廃除の取消し)
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

第897条(祭祀に関する権利の承継)
1 系譜、祭具及び墳墓の所有者は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主催すべき者があるときは、その者が承継する。

第902条(遺言による相続分の指定)
1 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の1人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

第903条(特別受益者の相続分)
1 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算出した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
1 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

第914条(遺言による担保責任の定め)
 前三条(911条~913条)の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。

第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

第1006条(遺言執行者の指定)
1 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

第1014条(特定財産に関する遺言の執行)
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金に係る契約の解除の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思の従う。

第1016条(遺言執行者の復任権)
1 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思の従う。

第1017条(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
1 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第1018条(遺言執行者の報酬)
1 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。

第1022条(遺言の撤回)
 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
1 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

第1025条(撤回された遺言の効力)
 前三項の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

第1026条(遺言の撤回権の放棄の禁止)
 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

第1047条(受遺者又は受贈者の負担額)
1 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
② 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思の従う。