遺言:【遺言を作成する前に】相続の基本原則

相続開始の原因(いつ相続が発生するのか)

相続は、人の死亡によって開始します(民法882条)。また、「失踪宣言(民法30条、31条)」においても、その効果として死亡とみなされるので、相続が開始されます。
水難・火災その他の事変によって死亡し、取り調べをした官庁または公署が死亡認定したときは、死亡として戸籍に記載され(戸籍法89条)、同じく死亡として扱われ、相続が開始されます。

相続の実際の過程では、被相続人(亡くなった人)の死亡→死亡届→葬儀→遺産分割協議→相続登記などを経て、遺産のある部分が相続人の個人財産になっていきますが、法律上は、被相続人が死亡すればその瞬間に相続人について相続が開始し、相続人による遺産の共有が始まる扱いとなります。

相続人が被相続人の死亡の事実を知っているか否か、死亡届を出したか否かなどを問いません。これは、財産の無主物化を回避するためです。

相続人の範囲(誰が相続するのか)

配偶者は常に相続人になる

被相続人は、遺言により相続方法(相続分)を指定することができます(民法902条)。この遺言による相続分の指定がない場合には、民法の定める相続分(「法定相続」)が適用されます。この「法定相続」で、誰と誰が相続人になるのかが決められており、配偶者(妻や夫)は常に相続人となります。ただし、内縁および事実婚の配偶者(法律上は夫婦と認められない者)は相続人になりません。

子どもなど血族の相続人の優先順位

配偶者以外の相続人(血族)には優先順位があります。

【第1順位】被相続人の子、またはその代襲者(民法887条)
亡くなった人に子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人になります。子どもが先に死亡して孫が生きている場合には孫、も後も既に死亡してひ孫がいればひ孫などの直系卑属になります。養子や認知した子、前婚の配偶者の子どもも含まれます。

【第2順位】直系尊属(民法889条1項①号)
亡くなった人に子どもがいなかったら、相続人になるのは配偶者と親です。親が先に死亡していれば祖父母、祖父母も死亡していれば曽祖父母などの直系尊属になります。養親も含まれます。

【第3順位】兄弟姉妹(民法889条1項②号)またはその代襲者(甥・姪)(民法889条2項)
子どもがおらず、両親や祖父母も亡くなっていれば、亡くなった人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥や姪です。

順位の上位者が相続人になれば、下位の人は相続人になれません。例えば第1順位の子どもが相続人になる場合は、親や兄弟姉妹は相続人にはなれません。また、同じ順位の相続人が複数いる場合は、その全員が相続人となります。