遺言:【遺言の自由】遺言自由の原則とその制限
遺言自由の原則
遺言は、故人(被相続人)の最終的意思を尊重し確保する制度であり、生前自由に処分できた自分の財産を、遺言によってどのように処分しようと原則として自由です。そして「遺言をする・しない」、「遺言の変更・撤回をする・しない」の自由が法律で保障されています。このことを「遺言自由の原則」といいます。
遺言は、15歳以上であればすることができます(民法961条)。この際、未成年者(18歳未満)であったとしても、親(法定代理人)の同意は不要です(民法962条)。
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができません(民法1026条)。これは、例えば遺言者が強迫等によって撤回権の放棄を強いられた場合等で、遺言者の意に反する損害を防止するための規定です。また、推定相続人との間で「遺言を撤回しない旨」を契約した場合であっても、その契約は無効となります。
遺言にも制限がある?
遺言者は、何でもかんでも遺言できるわけではなく、遺言できる事項は民法に定められているほか、次のような制限があります。
遺言能力による制限(民法963条)
遺言をするには、遺言をする時において遺言能力を有していなければなりません。遺言能力とは、自分がする遺言が法的にどのような結果を生じるのかを弁識、判断しうる能力のことをいいます。
遺留分による制限(民法1042条)
遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人が最低限取得することのできる相続分のことをいい法律で定められています。遺言によってもこの遺留分を侵害することはできません。ただし、遺留分を侵害している内容の遺言であっても、法的要件を備えていれば遺言自体は有効です。
この場合は、遺留分を有する相続人が「遺留分侵害額請求」という意思表示をすることで、その金額を取り戻すことになります(民法1046条)。遺留分侵害額請求も個人の意思表示ですので、請求するかしないかはその個人の自由意思によります。
すべての財産を一人の相続人に相続させたり、相続人以外の人に遺贈する、というような場合は、この遺留分についてよく検討しておく必要があります。
共同遺言の禁止(民法975条)
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができません。たとえ夫婦であっても、共同で一つの遺言書を作成することはできません。それぞれ別個に遺言書を作成する必要があります。
2人以上が同じ紙に遺言を書いた場合は、その遺言は無効になります。これは、遺言自由の原則によるところになります。 遺言をすること・変更すること・撤回することは、自分の意思で自由に行わなければなりませんので、2人以上で作成してしまうと、その事由が制約されてしまうからです。
公序良俗による制限(民法90条)
公序良俗に反する遺言は無効となります。“公序良俗に反する”とは、社会の秩序や善良な風俗を守ること、すなわち、公の秩序に反して社会的妥当性を著しく欠く行為はその法的効果が否定される、ということです。