遺言:【遺言の効力発生時期、撤回及び取消し】撤回の撤回は無効?
遺言の効力発生時期について
遺言は、遺言者が遺言の意思を表示した時点で成立しますが、その効力は遺言者の死亡の時から発生します(民法985条①)。従って、遺言によって財産を引き継ぐことが予想される者であっても、遺言者が亡くなるまでは、財産に対して何ら法的権利を取得するものではなく、また、その期待権すら持たないとされています。
遺言に停止条件が付されていた場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、条件が成就した時から遺言の効力が発生します(民法985条②)。
遺言の撤回及び取消し
遺言者は、自らの死亡によって遺言の効力が生じるまでいつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条)。
例えば、被相続人の死後に、矛盾する内容の遺言が2通出てきた場合は、後の遺言が効力を有します。
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様です(民法1024条)。
撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回されたり、取り消されたり、又は効力を生じさせなくしたとしても、元の遺言の効力は回復しません(非復活主義)(民法1025条)。
例えば、第1遺言を第2遺言で撤回した場合に、第2遺言を第3遺言で撤回、つまり撤回行為をさらに撤回しても、第1遺言は復活しません。これは、撤回した(または撤回したものとみなされた)遺言を復活させたいのであれば、別の遺言を改めて作成するべきだと考えられるからです。
ただし、その撤回されたり、取り消されたり、又は効力を生じさせなくした行為が、錯誤、詐欺又は強迫による場合だったときは、その遺言の効力は復活します(民法1025条ただし書)。
例えば、父(A)が自己所有の土地(甲)を子(B)に相続させる旨の遺言をした後、その(甲)土地を第三者(C)に譲渡したとします。そうすると遺言を撤回したものとみなされますが、(C)への譲渡行為が詐欺又は強迫を理由として取り消された場合は、父(A)の遺言は復活します。
他方、父(A)が成年被後見人であるというように、錯誤、詐欺又は強迫によるもの以外の理由で第三者(C)への譲渡行為が取り消された場合には、(A)の遺言の効力が復活することはありません。